黒の日記

とにかくひどい

8月25日

 体調が悪かったので病院へ行ってきた。

 診察代が3000円で薬代が4000円もした。領収書に書かれている金額を見た時、私は驚愕した。詐欺なのでないかと思った。今置かれてる私の経済状況が脳裏に浮かび、精算する際に思い切りためらってしまった。一縷ののぞみにかけて、貧乏学生の風体を演じ、出来る限り顔面表皮に悲壮感を貼り付けるなどをして温情を誘おうとしたが、薬剤師は断固として値段を下げようとはしなかった。我ながら情けないことだと思った。しぶしぶ代金を支払い、病院を後にした。

 薬と領収書の入った袋を提げて、失った7000円に想いを馳せながら帰った。道中、道端の石ころを医師の顔に見立てて蹴ったり踏みつけたりしていたら少しばかり溜飲が下がった。

 帰宅後に薬を服用するとみるみる体調が治っていって驚いた。火照っていた体温は下がり、ずびずびだった鼻詰まりはたちまちに放出され、激しく喉を痛めていた咳は途端になりを潜めた。気づけば体のだるさも感じなくなっていた。ほかにも、先天的な癖毛も治っていたし、心なしか肌の調子もいつもよりツヤツヤしていた。「これも薬のおかげなのか?」と思った。

 そのあとのことも全てが順調に進んだ。勉強を始めるといつもの三倍は捗ったし、いつもつい放っておいてしまう家事はスイスイ片付いた。ついでに無くした靴下の片割れも大量に見つけることができた。

 部屋の掃除をすると、ずっと探していたGBA用ソフトの「星のカービィ鏡の大迷宮」が出てきてうれしかった。これまでのことから、上記した事象は薬のおかげであると推察できた。

 ここまで医学は進歩しているのかと私は感心した。7000円払っといてよかった、代金踏んだくって逃走しようかとも考えたが実行に移さなくて本当によかった。

 私はあの医者に敬意の念を抱かざるを得なかった。

 心の中で、詐欺師と疑ったことを謝罪したあと、幼い頃から医学の勉強をして医者になっておけばよかったと心の底から強く後悔した。