黒の日記

とにかくひどい

高校の時に書いた短編小説

高校の時に書いた小説が出てきた。せっかくなのでのっけてみようと思う。

 タイトルは「土管」という。多分、恥ずかしなってすぐ消すだろう。

 

 

 

土管。

 

下校途中に突然の夕立に降られ、俺と佐倉は近くにあった公園の横積みになっている大きめの土管の中で雨宿りをすることにした。中はところどころに錆が浮いて出ており、鉄臭いにおいがした。
「ひゃー。びっちょびちょになっちゃったよ、ワイシャツが肌に張り付いて気持ちわりぃなぁ、クソ」
俺は言った。 
「ほんとですねー。ていうか止みますかね、これ」
佐倉は心配そうに外を見やってそう言い、「いや止まないですよこれ!」と自分で返した。
やかましいなと思ったが確かにこいつの言うとおりである。外では雲の底が抜けたように迸る雨がざざざざと地面を激しく打ちつけていて土管の中にまでその衝撃が小さい振動として伝わってくる。さらに土管の中から見える外の眺めは雨の凄まじい飛沫で煙っていて少し先も見えない状態だった。そして一向に止む気配が無い。普通の雨だったらまだしもこうも激しくっちゃあここにとどまらざるを得ないだろう。無理をしてここからあと一キロはある自宅まで走れば風邪をひくマヌケな自分の姿を容易に想像できる。
「ま、とりあえずはまだ様子を見るか」
「ですねぇ」
佐倉はそう返してから「あ、そういえば先輩!」と目をキラキラさせて俺のほうに身を乗り出した。
「すごい事に気づいたんですよ!」
またか、と思った。
「なに? 言ってみて」
どうせいつものたいしたことない、果てしなくどうでもいい話だろう。俺は無視して適当な相槌をうつことにした。
佐倉は意気揚々に腕を組んで「ふふん!」と鼻先で笑った「絶対驚くから聞いててくださいね」 
それから佐倉は自信満々に、やはりどうでもいい話を始めた。俺はそれに「うん」とか「へぇ」とか「なるほど」などと適当な相槌を挟んだ。すると佐倉は調子よくなり話し方に熱がこもり大仰な身振り手振りも加えてそのまま話し続けた。
やがて俺がまともに聞いていないことに気がついた佐倉は俺の顔を下からのぞいて「ちゃんと聞いて下さいよー」とぷぅと顔を膨らませて怒った。それにも適当な返しをしたらさらに顔を破裂させんばかりに膨らませて「ねぇー構ってくださいよ」と駄々をこねる子供のようなしぐさをしてきた。超鬱陶しい。
その後もやかましく何か言っていたが俺は一貫して適当な相槌を打ち続けた。怨念を込める勢いで相槌を続けるとやがて佐倉はぶぅと言って三角座りになり携帯を弄りだした。そして「こんな可愛い後輩の事を構わないなんて先輩はくずです」とか「そもそも先輩はいつもいつも…」とぶつぶつつぶやいていた。
佐倉が黙ると土管の中には雨音だけが響いた。外を見てみるが、依然として晴れる気配はなく雨が弱まる気配もない。
俺は佐倉に視線を移した。
短く切りそろえた艶やかな黒髪、そこから滴る雨水、リスのように愛嬌のある端正な顔立ち、陽を知らないような白い肌に雨を吸い込んで張り付くワイシャツ、それによって浮きでるきれいで細い体の線。イエス。実にエロティック。
頭の中でガキンと何かが外れる音がした。
俺は思うよりも早く佐倉を押し倒していた。華奢な体のこいつを押し倒すのにはそれほど力は必要なかった。
雨音が激しくなった。
それに乗じて自分の心臓も激しく高鳴る。
佐倉はかなり驚いていたが状況を飲み込むと顔を赤らめた。少し抵抗をしてみせたが軽く抑えつけるとすぐおとなしくなった。
「佐倉、いいか?」
俺がそう言うと、佐倉は少し間をおいてから、俺の目をまっすぐに見つめ恥ずかしそうに小さく頷いた。
俺は佐倉のズボンのチャックを下ろし、そこから立派に屹立する土管に優しく触れた。