黒の日記

とにかくひどい

謹賀新年。

 

 明けましておめでとうございます。

 年明けから2日経ちましたね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。僕は大晦日にコタツへ入ったきり未だに出られません。本当に一歩も出てません。生活圏内をコタツ周辺3mに絞っているためです。卓上には竹籠から溢れるミカン、パソコンや炊飯器、未使用の食器や箸類が置かれ、コタツの周りにはティッシュやゴミ箱、飲みかけのジュースやお菓子が散らばり、「鋼の錬金術師」全巻や「ドラゴンボール」全巻が揃っている。負ける気がしない。まさに完璧な布陣。築かれた我が城はルイブール要塞が如く。恐ろしく居心地がいい。ちなみに食べ終わった皿はベランダの戸が手の届く範囲にあるのでそこを開けて投げ捨てています。実に良い暮らしです。僕が長年望んでいたのはこういう暮らしだったことを思い出しました。これを生業にして給料を貰いたいなあ。

 しかし毎年決まっていつも同じ夢をみるのに叶えられないのは毎年決まっていつも同じ邪魔者が入るからです。そう、母の登場です。

「あんた、いつまでこうしてるつもり!」

  母は去年と同じことを言いました。

「あと三年くらい」

 僕も去年と同じ返答をしました。「いや、五年はこうしていたい」

「いいから外に出てきなさい」

 母はそう言うやいなやコタツの周りを片付けようとします。

「いやだ、いやだ」

 僕は必死でと手を伸ばして母を止めようしますが、頑なにコタツからは出ようとしないので周りからどんどん大切なものが奪われていく。我が城はたやすく瓦解していく。「やめてくれ、やめてくれ」と僕は泣きそうになりながら訴えるが母は手を止めない。そして今度は机の上にあるコタツのお供までも奪おうとしてくる。 

 わかった、腹をくくろう。僕は素早く身を起こし、母よりも先に机の上のミカンを掴み取る。そしてそれを母の顔面めがけてぶん投げた。見事命中し、母は後ずさった。顔からは飛び散ったミカンの汁が垂れている。

 

実家を追い出される覚悟は決めた。

僕はコタツとともに生きていくのだ。

 

すかさず第二撃。母の左肩に命中。さらに後退する。間をおかず第三撃。右足に命中。膝をつく。手を休めるな、第四撃といったところで母は「ひぇ〜〜」と言って逃亡した。去り際に「今年こそ絶対追い出すわー!!」と聞こえたが、しらないふりをした。

 19年敗北し続けてきた母との親子戦争で初勝利を刻んだ。無論人間としては敗北である。と言うか人間失格である。

 僕は再び根城へ潜り瞼を落とした。

  落ちる意識の中、コタツとともに生き抜く決意をした。

少なくとも、 三年はこうして過ごそうと思った。